徹底した「時間管理」で心身ともにゆとりある研究をしよう
皆さんは、気持ちいい研究生活を送れているでしょうか。
心身ともに安定して心地よく研究ができるとしたら、幸せだと思いませんか?
この記事は、
心身ともに安定した研究生活を送れるよう、タスクシュート時間術による時間管理を徹底しませんか?
と提案する記事になります。
半年以上試行錯誤しながら時間管理を徹底してきた都内大学院博士3年のみそしる(@misosoup_no_gu)が、本や経験を元にタスクシュートによる時間管理の良さ・その理由をお伝えしていきます。
時間管理でブレにくい自分を育てていこう
研究という営みは、いろいろな不安定な要素をはらんでいます。それゆえ、僕を含め多くの人が精神的に不安定な状況に置かれているのではないでしょうか*1。
現に、大学院生が鬱や不安を抱える割合は、一般の人たちの6倍にも及ぶと言う報告*2があるくらいです。
もちろん、精神を不安定にしてしまう要因は多岐にわたりますが、その大部分を占めるものは時間(特に未来)に関することではないでしょうか*3。
実験がうまくいくだろうか(未来)
ああ、今週も全然進捗が生まれなかった(過去)
自分が今やっているテーマが卒業までにうまく完結するか不安だ(未来)
進捗報告で先生や先輩にボロボロに言われるかもしれない(未来)
また、学生という立場であればそれに加えて、
- 卒業後の進路先をきちんと見つけることができるだろうか(未来)
といったこともあるでしょう。しかしながら、当たり前のことですが未来を自分の思い通りに動かすことはできません。
ならば、わたしたちにできる自分を守る方法としては、
ということになるのではないでしょうか?
こういったことを既に卒なくこなすことができる方もいるかもしれません。僕は元々めちゃくちゃ下手で、何度も研究で精神的に疲弊した経験があります。しかし、ここ最近はこれらがうまくできるようになってきました。
いくつか要因は考えられますが、タスクシュート時間術を用いた時間管理を徹底してきたことが大きな要因であることは間違いありません。
時間管理を始めてから半年以上経つのですが、今までの自分からは考えられないくらい精神・生活が安定するようになり、もう簡単には手放せないものになりました。
なぜ時間管理をすることが大事なのか?
上記で書いたように、こと研究を行う上で生じる不安の多くは時間(未来)に関することです。
タスクシュート時間術による時間管理は、未来ではなく現在に集中できるようになるための強力な方法です。
それゆえ、極力不安から距離を置き、不安を冷静に眺めることができるようになります。
この価値ある手法がもっと研究の場面で広がっていってほしいと願いながら、使い始めてから半年以上経った今、感じることを紹介していこうと思います*4。
なお、以下の内容は、タスクシュートのパイオニアである佐々木正悟さんと大橋悦夫さんの著書『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』にも共通する点が多々あります。
僕はタスクシュートを始めてしばらくしてから読んだのですが、まさに使った上での実感・利点が尽く書かれていて、何度も何度も頷きながら読みました。
興味のある方は、こちらも一読をお勧めします。
タスクシュート時間術とは?
タスクシュート時間術とは、
1日の流れを1枚のシート(ページ)で管理し、起きてから寝るまでの全ての出来事を直列で見積もり時間とともに書き出し、こなしていく
という方法論です。
いわゆるタスク管理方法の一種ですが、以下の3つの点で他のものとは大きく異なります。
- 仕事・研究上のタスクだけでなく、1日のうちに予想される・予定しているあらゆる行動を書き出す。
- タスクと共に見積もり時間も記載する。
- 済んだ行動・タスクは画面から消えず、「記録」として残り続ける。
この3つに関して、具体的に僕自身の画面を見せながら説明していきます。
1日の全ての行動を、見積もり時間とともに事前に書き出す
まずは1, 2に関してです。以下の画像(図1)は、この記事を書いている時のタスクシュートアプリ(TaskChute Cloud)のスクリーンショットです。
実績欄に数値が入っているものは既に済んでいる行動、青字のものは現在行っている行動、数字がなく「なし」と記載されているものはこれからやる行動です。
ここに載せてあるのは一部のタスクだけですが、その日起きてから夜寝るまでにやる予定のタスク・行動が全て直列で、見積もりの時間と共にリストになっています。これが1,2つ目の特徴です。
この利点として、
- そもそも1日に研究に使える時間がかなり限られている、ということを実感できる。
- あらゆる行動は、時間の消費とは不可分だというごくごく当たり前のことを意識できる。
ということが挙げられます。以下で説明しましょう。
1日という時間はごくごく限られている
先に載せた図の上部を拡大した図を下に載せます。その左側を見てください。
この日のタスクは全部で60個あり、記事を書いている時点で22個済んでいて、38個残っているというのがお分かりかと思います。
1日に60個もタスクがあるなんて、多すぎる!と思った方もいるかもしれません。
しかし既に述べているように、これには歯を磨く、風呂に入る、水を飲む、ストレッチをする、など生活をする上で欠かせないことや習慣化したいことが全て含まれています。研究だけのタスクは60個のうち半分くらいなものです。
意識はしていないかもしれませんが、基本的には今読んでくれているあなたも1日にこれくらい数多くのことをこなしながら生活しているはずです。
僕自身の記録でいくと、1日24時間のうち、睡眠を含めて「生活」に必要なことは合計14時間くらいにもおよびます。研究に使える時間は1日でせいぜい10時間くらいのものです。
もちろん、睡眠を削ったりとして時間を捻出することもできます。が、このタスクシュートを長らく使ってくると、「睡眠時間という極めて重要な時間を仕事に充てている」ということに気づくでしょう*5。
研究は、集中力や創造性、論理的な考え方、体力が必要になってくるので、成果を出すには睡眠を削るのは得策ではないはずですよね。
あらゆる行動は、必ず時間の消費を伴う
さらに、中央部に目をもっていくと、その日やる予定のものが見積もり通りの時間進んだ場合、何時に終わるのか」というのがありありと示されます。これが強烈に時間に対する意識を強めてくれます。
見積もり通りの時間進んだ場合とあえて強調したのには意味があります。
実際に使ってみると痛いほどわかるのですが、見積もり時間以内にタスクが終わることはあまりありません。多くの場合、見積もり時間を超過してしまいます。
「じゃあ、わざわざ時間を見積もっておくことは無駄じゃない?」と思われるかもしれないのですが、そんなことはありません。
無意識のうちに「これくらいで終わるかな?」と考えている時間よりも、実際はもっと時間がかかることを実感するためにやるのです。「なんとなくこれくらい」の感覚と「実際はこれくらい」の感覚をすり合わせていくようなものです。
これを継続していくことで、
- 1日にまずやり切れないくらいのタスクを詰め込んでしまうことを避けられる
- 「自分が1日にできるのはこれくらい」という理解が深まることで、無理なく長期的に研究を進めていくことができる
- 時間の使い方が上手になるので、少しずつ「自分が1日にできること」が増えていく
といったことが少しずつできるようになっていきます。
また、終了時刻が表示されることの利点は他にもあります。
例えば、やっていることへの集中が切れて、スマホに手が伸びてしまったことを考えましょう。タスクシュートではこういう時間もしっかり記録します。
そうすると、スマホの時間が長くなればなるほど、この終了予定時刻もどんどんう後ろ倒しされて表示されます。家に帰る時間、眠りにつく時間もどんどん遅れて表示されます。
自分のあらゆる行動は、時間とは不可分だというあまりにも当たり前のことを、強烈に実感できます。
済んだことが「記録」として残り続ける。
また、済んだことについて、何を行ったか、どれくらいの時間がかかったか、という記録が明確に残っていることにも気づくでしょう。これが3つ目の特徴です。
よくあるタスク管理アプリでは、チェックマークとともにタスク名が書かれてあり、タスクが済んだらチェックを入れ、タスク名に取り消し線が引かれる、というものでしょう。以下のようなイメージです。
物によっては、チェックした途端タスクが消え去るものもあるかもしれません。いずれにしても、終わったタスクは今後目に触れることはほとんどないはずです。
僕自身、過去にTrelloを用いていた場合は、まさにそのような感じでした。しかし、今振り返ると、非常にもったいないことをしていたと思います。なぜでしょう?
1つ目の理由は、記録を振り返るのは計画を立てる段階で有意義だからです。
過去の記録を振り返ることによって、次の記録を立てるときにより現実的な見積もり時間を立てることができます。上記で述べた「なんとなくこれくらい」の感覚と「実際はこれくらい」の感覚をすり合わせていくということを、記録に基づいて行っていく、ということですね。
また、自分がどれくらいやるべきことをこなしたかということを、記憶ではなくて記録によって振り返ることができます。
僕自身使い始めてからわかったこととして、「これくらい仕事をした」という感覚・記憶と、「実際にこれくらい仕事をした」という記録は大きくずれていることが多いです。前者を多く見積もっていることが往々にしてあります。
これはおそらく、「今日はこんなに疲れてるから、たくさん仕事をこなしただろう」と認識することで自分を守る(?)ような働きがあるのでしょう。
もちろん悪いことではないですが、後々になって「あのときあれだけ頑張っていたのになぜこんなにやることが溜まっているんだ…」と落ち込む原因になりかねません。
記録をもとに1日や1週間にこなしたことを振り返ることで、気を引き締めることができますし、逆に自分が思っているよりも仕事が進んでいたときは「お、意外と自分頑張っているじゃん」と自分で自分を褒めてあげることもできます。
些細なことのように思われるかもしれませんが、やるべきことをコツコツとこなしていると自覚することは、精神衛生上非常に重要です。
こういった些細なことが自分自身の自信に繋がり、研究をする上での自信のなさや自己否定を打ち消してくれます。
タスクシュートを使って、日常にそういった仕組みを組み込んでいきましょう。
まとめ
今回も読んでいただきありがとうございました。
本記事では、タスクシュートを研究に活かす利点を詳しく述べてきました。 次回以降の記事で具体的な導入方法・使い方を紹介していきます。
ではまた次の記事でお会いしましょう。みそしる(@misosoup_no_gu)でした。
*1:実際は、研究に限らず「生きること」自体が不安定な営みですよね。だからこそ、以下この記事で書いたことがうまくできるようになると、生きること自体も快適になるのではないかと僕は考え、実践しています。
*3:他の主要因は人間関係だと思っていますが、こちらは別の対処方法が必要だと思うのでこの記事では取りあげません。 人間関係に起因する悩みへの対処法は、僕自身まだまだ訓練中です。が、こちらもそれなりに方法論があるような気がしています。整理できたら記事にします。
*4:みそしるはタスクシュートに関するサービスを提供している方とつながりはありません。ただただ、この素晴らしい方法でもっとみんな幸せになってほしいという気持ちで書いてます。一方で本ブログは、TaskChute Cloudのアフィリエイトプログラムを利用しているので、このブログのリンクから登録してくれた方がいらっしゃったら、キャッシュバックが僕のもとに入ってくることをご理解頂ければと思います。
*5:これが悪いこととは言いません。TaskChute Cloudを使い始める前までは僕もよくやっていましたし、睡眠時間を削ってもなお高度なことを成し遂げ続けられる人もごく一部いるからです。ただ僕のような凡人は、睡眠時間を削ると得てして次の日の集中力は駄々下がりで、トータルでみると生産性は変わっていないか、むしろ回復まで時間を要するので生産性は落ちていることに気がついて、やめました。